『「彩」 吉祥寺を読む会 2014年 年報』サンプル 巻頭言

 吉祥寺 古典を読む会は、二〇一三年七月に産声を上げました。地域の皆さん、インターネットでこの会を知った皆さん、主宰者の知人・友人……。さまざまなご縁の方が集う古典愛好サークルです。参加者の年齢も二十代から八十代まで幅広いです。一見さんも常連さんも分け隔てなく、和気あいあいと作品を楽しんでおります。

 このたび、おかげさまで、会が一周年を迎えました。そのことを記念し、会の歩みをまとめた年報を作成いたしました。十一回の定例会で読んできた作品から、印象的な場面の本文・現代語訳をまとめ、簡単な解説を添えています。会員から寄せられたエッセイも掲載しております。


 さて、私は、古典文学を読むことの楽しみは、大きく分けて二つあるのではないかと考えています。一つは、千年の時を隔てた作品の中に、自分と通じるものを見出だす楽しさです。変わらない人間の心を思うとき、何だか励まされたり救われたりするような思いになるものです。もう一つは、現代とは異なる生活習慣や価値観に触れる楽しさです。自分のものの見方や感じ方が広がり、感受性が豊かになるように感じられます。


 これらの楽しみを思うとき、「古典作品に親しむことは、自身の生に、豊かな彩りを添えてくれる営みである」と感じずにはいられません。その感慨と、作品中の多彩なキャラクターに敬意をこめて、第一号の年報は「彩」と名付けました。


 この本を手に取ってくださった方々が、彩り豊かな毎日をお過ごしになることを願って。

 

二〇一四年八月  吉祥寺 古典を読む会  主宰 吉田裕子